鎖上に伸びる小枝。ハミスジエダシャクに似た幼虫が、杭の間に張られたチェーンの上で身体を伸ばしていた。チェーンは錆付いていて、木肌と感触が似ているのだろう。歩脚を縮めてじっとしている姿は何か敬虔さの様なものを感じる。 木壁にいたネコハグモ。先月は樹皮下で越冬しているのを見かけたが、そろそろ活動し始めるのかな。 ユスリカの一種の♂。早朝に欄干や池岸のヤツデ葉裏などに群生していたが、昼近くになって数百匹レベルの蚊柱を何ヶ所かで形成した。昨日、今日と気温が高かったのでコカゲロウ・トビケラ類の羽化があるのではないかと期待したが見つけることはできなかった。ただ公衆トイレの高い位置に張られたオオヒメグモの網に、先月まではなかったキリウジガガンボらしきものがかかっていたので、一部の種はどこかで羽化していることだろう。 コナラ枝間に不規則網を張るヒメグモの一種。撮影時はてっきりバラギヒメグモだと思っていたのだが、妙に歩脚が太い。アシブトヒメグモとも雰囲気は異なり、今ひとつはっきりしない。 サクラ樹幹にあったシラホシコヤガ(多分)の繭。幼虫時代から自らの食物である地衣類を身体にまとっており、そのまま蛹化するようだ。周囲の色に合わせるのではなく、周囲のものを直接身につけるのだから当然目立たない。 クロバネフユシャクの産卵。ウスバフユシャクは2、3列の卵塊を数ヶ所に分けて産み付けるが、本種は1ヵ所にまとめて産み付ける。♀の腹部は中身の殆どが卵であるため、産卵後の体長は産卵前のほぼ半分になってしまう。ウスバフユシャクの産卵後の体長は若干縮む程度で、腹部の横の縮みが大きくしょぼくれた感じになる。カムフラージュのためか両種とも尾毛の殆どをを卵塊上につけてしまうので、産卵前後では全く別種のように見える。 まだまだ見られるウスバフユシャクの交尾。一般的にウスバフユシャクの成虫出現期は12月中旬から2月初旬で、東京では12月下旬が最盛期ということになっているが、石神井公園では1月中旬から下旬にかけてが最も多く見られ、2月中旬に入ってもまだ多数の個体が見られる。各地での本年度の傾向なのか、石神井公園特有の傾向なのかは判らない。 木柵上を歩く尺取虫。1月にも緑色の尺取虫を見つけたが形状が異なり、エダシャク系の雰囲気だ。デジカメで動画撮影したのだがあまりにも歩行速度が遅く、巨大ファイルになってしまったため保存はあきらめた。 クワの枝にぶら下がるクワコの繭。クワコは通常卵越冬だが、11月に羽化するはずのものが気温低下などの影響で羽化できず、そのまま越冬してしまう例もあるらしい。成虫出現期である6月まではかなり間があり、この繭が無事に羽化できるかどうかは微妙なところだ。 昨年クワコの成虫を見つけた別のクワの木はバッサリ伐られてしまった。かつては観察しやすい場所にアオバズクが営巣したアカマツは切株と化し、ヒメカマキリモドキが葉裏にとまり、その卵らしい柄の短い優曇華が見つかった水辺のクワの木も消え去った。西側斜面にひっそりと生えていたヒトリシズカは観察池の花壇みたいな場所に移植され、名前のような趣きを失っている。餌付けされたカワセミを撮影するカメラマンの要望?のためゴイシシジミが繁殖したササの上部が刈られ、2004年には産室を作り繁殖が期待された(期待していたのは私一人だと思うが・・・)ヤマトコマチグモは数日で草刈に遭い、その後は全く見られない。プールそばのクズにはカンタンの声が聞かれたのだが、クズは秋口に一気に刈り取られてしまうので殆ど繁殖できない。昨年は公園そばの空き地で少数の声が聞かれただけで、草地の連続性のない石神井公園では絶滅は時間の問題かもしれない。小さな生き物たちがどこにどうやって生息しているかを知らずして『自然』を守ることなど出来はしない。公園を管理する側にして見れば諸事情があるのだろうが、『自然豊かな公園』を謳うのであればもう少し考えてもらいたいものだ。『自然』と『危険』は切り離せない。無闇に人を集めようとすれば『安心・安全』に対して必要以上の気を使い、必然的にそこの『自然』は見た目ばかりの『薄っぺら』なものになってゆく。『自然』の中の『危険』に対しては『知恵』を持って対処し付き合っていくのが大切であり、手放しの『安心・安全』などは人間を『薄っぺら』にするだけの・・・愚痴が多くなってしまった。『安心・安全』は建造物を構築するときにこそ最も配慮すべきものです。 植え込みの中にあったクサグモの卵のう。作りたての卵のうは純白の多面体で美しいが、冬を越すころには枯葉や小枝、木の実などが付着しゴミの塊となる。当然目立たなくなるので、これは想定の範囲内というところか。卵のうの端をちょっとカットしてみる(下の画像)。卵のうは極めて丈夫にできており、中の子グモを潰さずに手で引きちぎるのは無理。切った途端に身体の赤い2齢幼体が活動期と変わらぬ速さで飛び出してきた。活動能力が鈍くなっているのならともかく、通常の活動能力を持ったまま狭い卵のう内でひしめき合っているのはどんな気分なのだろう。クサグモの出嚢期は3月下旬で、穴の開いた卵のうは子グモたちによって即座に補修される。 木柵の下面にあった蛾?の繭。周囲には不規則網のような糸が張られているが、クモの糸とは雰囲気が異なり、繭の主が張り巡らしたようだ。 追記:主にオオヒメグモに寄生するマダラコブクモヒメバチの繭のようだ。 木柵上を歩いていたヨコヅナサシガメ終齢幼虫。そろそろ活動し始めるのか、集団越冬群から零れ落ちてしまっただけなのかは判らない。成虫への脱皮はちょうどGWの頃になる。 アラカシの芽の脇にいたヨコバイの一種。新芽に擬態しているような色合いだが、見ているほうが勝手にそう思うだけか。 アラカシの新芽脇にいたカイガラムシの一種。白黒のツートンカラーがいい感じ。右の個体は粉を吹いているようだ。 アラカシの葉裏にいたクリオオアブラムシ? 一頭だけポツンとくっついていた。クリオオアブラムシはクリ属だけでなくコナラ属にもつくが、成虫出現期が4月~晩秋なので、クリオオアブラムシだとしたら新成虫ではなく昨年の生き残りということになる。厳冬期を単独で耐え抜いたのだろうか。 ケヤキ樹皮下にいたオオハエトリの♂。別にファイティングポーズをとっている訳ではない。顔の前に構えているのはグローブではなく触肢なのだ。同属のヨダンハエトリの♂も巨大な触肢を持っているが、この巨大な触肢が何の役に立つのかとなると ? である。触肢の先端を♀の外雌器に挿入する生殖活動においても、捕食時においてもかなり邪魔になるような気がするのだが。強いて理由を挙げれば♀を巡っての♂同士の闘争に役立てるということか。とすれば、案外見た目どおりのファイティングポーズということになるのかも知れない。 木柵上を歩いていたウシカメムシ。名前の通り牛面系だが、終齢幼虫は仮面のような人面系の外観を持つ。ホストはアセビ、サクラ、ミカン、フジなど結構範囲が広いのだが、食餌植物から吸汁するだけでは成虫にはなれない。他のカメムシやセミの卵から吸汁しないと終齢より先に進めないというのだ。蚊や虻が産卵するときに動物の血が必要になる仕組みに似ているが、終齢幼虫になったからといって死に物狂いで他の卵を探し回るということでもない。卵からの吸汁は幼虫のどのステージでもよく、野外ではごく自然の流れとして卵吸汁が行われるようだ。
by kjr_shoji
| 2006-02-11 22:54
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