ウスバフユシャク

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ウスバフユシャクの♂。前翅の内横線(翅の付け根側の線)がほぼ直角に曲がり、外横線(外縁側の線)は緩やかなカーブを描く。よく似たクロテンフユシャクは色が淡いが両種とも個体変異が多く、主に外横線と内横線で判別する。褐色斑の大小は識別点にならない。石神井公園ではクロテンフユシャクは確認できていない。

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腹部後方を持ち上げ、橙黄色のフェロモン嚢(のう)を露出してコーリング(フェロモンを散布し♂を惹き寄せる)を行う♀。シロフフユエダシャクはライトを当てるとすぐにフェロモン嚢を引っ込めてしまうが、本種は結構無頓着だ。鼻を近づけてみたがフェロモンの匂いは感じられず、残念なことに?その気にはならなかった。
・・・待てよ。蛾の専門家ならいざ知らず、素人が北風吹きすさぶ真冬の夜に観察を続けるなんて正気の沙汰ではない。フユシャクのフェロモンに少なからず反応してしまったのか・・・


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交尾はサクラやクヌギなどの幹よりも木柵上のほうが圧倒的に多く見られる。1月半ばには18:00~20:00の間に40組以上の交尾が見られた日もある。
木柵は高さ60cm前後で二段になっており長く続いている。高さ30㎝前後の一段目には殆ど見られず、フェロモンを散布するためには二段目の高さがちょうどいいのかもしれない。木柵内にはサクラ、クヌギがあり、下草はアズマネザサになっている。
日没後♀は木柵上、アズマネザサや枯れ草の茎、サクラのひこばえ枝などでコーリングを行い、♂はその近辺を翔び回る。飛翔高度は殆どの場合地上1m以下。♀のフェロモンは大まかな位置を知らせるだけらしく、♂は狂ったように飛び回り、見当違いのところにとまっては羽ばたき歩行を行う。そして♀がいなければまた翔び回る、という行動を繰り返す。♀を探り当てると上から覆いかぶさり、腹部を斜めに曲げ自分の生殖器を♀の生殖器口にねじ込む。樹幹で交尾したペアは♀主導でひたすら上に向かって歩き続ける。少なくとも高さ5m以上に登り、その先は見失ってしまう。樹冠近くの枝に産卵するようだ。
『冬尺蛾』(中島秀雄 1986 築地書館)によると、樹冠近くまで登ったペアは再び根元近くに戻ってくるという。交尾して暫くは樹冠近くのほうが安全だという認識があるのか、移動(歩行)自体に意味があるのか。木柵上のペアは右に左に歩き回るが、木柵を下りてホストの樹木に向かう様子はない。歩行自体に意味があるとすれば、木柵上を移動し続けることは無駄な行動ではなくなる。


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ライトを当て続けると♂は♀を翅で覆い隠す。なかなかのナイトぶりだ。


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サクラのひこばえの枝(拡大解釈で根元付近から伸びた枝とする)で交尾するペア(上)と、サクラ樹幹をひたすら這い上がるペア(下)。これらが本来の姿なのだろう。


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薄羽ならぬ花羽フユシャク !? 羽化に失敗したのか、♂の翅が丸まって花状を呈している。これでは当然翔べるはずもなく、歩行だけで♀に辿り着いたのだろう。単に運がよかったのか、凄まじい執念の成せる業か。


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シロフフユエダシャク(右)のペアと徒競走。シロフフユエダシャクは歩行速度が速く、クロスしてウスバフユシャクの上を乗り越えていった。通常の歩行では♂は♀に合わせ後ろ向きに脚を動かす。しかし歩行速度が上がると殆ど引きずられる格好になる。振り回される♂たちにはつい同情の念を持ってしまう。


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木柵上に産卵する♀。背を丸め、腹端を木柵面に押し当てている。一般的にはフユシャクの♀は樹冠近くの枝に産卵することになっている。が、ここの♀は樹木に移動しようとはせず近場に産卵している。下草があり、落葉がある環境下においては「孵化した幼虫がホストへ移動する」という選択肢があるのだろうか。

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卵と一緒に粘着力のある体液が排出される。卵はその体液の粘着力で木柵面に固定され、尾毛が卵を覆うように付着してゆく。粘液は褐色味を帯び、乾いて陽に当たると金色に輝いて見える。産卵を終えた♀は尾毛が殆どなくなり、腹部もみすぼらしくなり別種のように見える。
注). 観察された様子から個人的に推測したもので、学術的根拠はありません。


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産み付けられた卵塊。卵自体は淡暗緑色をしている。卵数は10~20個程度だが、5~6個のものや30個を超えるものもある。


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メガネヤチグモの幼体に捕われた♀(上)と、季節外れのコクサグモに捕食される♀(下)。フユシャクの成虫が冬に現れるのは捕食者や寄生蜂などから逃れるためのようだが、翅を失くした身では捕食者が耐寒性を持っている場合ひとたまりもない。
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by kjr_shoji | 2006-02-06 21:19 | チョウ目
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